大分県外から臼杵市に移住してくる方で「おいさん」とは何なのかが分からない人も多いかと思います。そういう方は、以前にこのブログで書いた「臼杵のおいさん」(←クリック)をブックマーク!「おいさん」とはどういうものなのか?私の主観がほとんどですが、
予備知識をつけていただければと思います。 私が臼杵市にUターン移住して1年余。四季を通じておいさんを観察すると、中には大変な「職人」がいることに気づかされます。彼らは春・夏・秋・冬と自然に分け入って旬のものを収穫し、それを加工し、おいさん仲間や日ごろお世話になっているスナックのおねえちゃんなどに配布して歩いているのです。
今回はそんな「職人おいさん」の春の週末に密着。その内容をレポートします。
孤高の「職人おいさん」
職人おいさんは「あることに対してこだわりが強い」という特徴を持ちます。
例えば、我が家の知り合いでKちゃん(←これも以前に触れましたが、臼杵では誰でも「ちゃん付け」で呼ばれます)という職人おいさんがいますが、彼が秋に作る「柚子胡椒」はこれまで食べた数々の柚子胡椒の遥か上をいく一級品です。辛み、塩気、フレッシュな柚子の薫り、その全てが見事なハーモニー。彼はこの柚子胡椒製作に毎週末を費やしています。ちなみに彼は元々は大工さん。なぜここまで柚子胡椒に全勢力を傾けているのか謎だし、特に尋ねてもいません。我が家ではKちゃんにただただ感謝し、秋から冬にかけての鍋物を彼の柚子胡椒で満喫しているのです。
そして今回「タケノコの陣」の主役であるSちゃん・73歳は元タクシードライバー。海岸地域出身でタケノコとは全く関係のない人生でした。
私が赤ちゃんの時から家族ぐるみの付き合いがある職人おいさん・Sちゃんと、タケノコを求めて臼杵市某所の山に分け入ります↓
タケノコ採りの指南を受ける
もちろん、分け入っている山はSちゃんの知り合いの山。竹林がどんどん広がっているため、タケノコ採りを山のオーナーである友人から頼まれています。
4月11日に密着取材したのですが、既にSちゃんはこの時3週目。なんと毎週末タケノコ成敗に来ているのです。
彼のターゲットであるタケノコはこんな感じで潜んでいます↓
ちょこーっとしか出ていないのです。初タケノコ採りの私に見つけ方を指南。足裏に石を踏みつけるような感覚があればそれがタケノコポイント。そして周りの土から丁寧に取り除いていきます↓
タケノコの矛先が向いている方向からタケノコを掘り返すと綺麗にとれるのですが、方向を間違えると途中で折れて実が崩れるので注意が必要です。
綺麗に掘り返して採れたタケノコはかなりのブキミちゃん↓
ブキミ部分を切り落とします↓
美しき人工と自然のせめぎあい
その後もSちゃんは黙々とタケノコという名のお宝さがし。写真も一通り撮り、ふと周囲を見渡すと古い石垣が。
「ここに城でもあったのか?」とSちゃんに聞くと、もともとここは段々畑があってその畑の石垣だったのだとか。後継者がいなくなり耕す人がいなくなると、凄いスピードで竹が覆ってくるのです。ちょっとした廃墟感がある、人工と自然の美しい攻防風景です。しかし、毎年タケノコを採りに来ているSちゃん管理のエリアだけは畑のまま。職人おいさんのきっちりした仕事は、竹林の侵入を許しません。
清々しいおいさんの春の週末
こんな風に自然の中に分け入って過ごすおいさんの春の週末は実に健康的。73歳の今でも口も頭も達者なわけです。
山を下るときにはこんにゃく芋の花に加えてこんなきれいな花も↓
おいさんでなくてもちょっとクセになりそうな週末の活動でした。
「職人おいさん」の真骨頂はここから
1時間ほどかけ20本近くのタケノコを収穫できました。しかし「職人おいさん」にはこの後まだまだ続きがあるのです。
私:「これは大漁収穫だったね。家に帰って調理が楽しみだね。」
Sちゃん:「なんいよんのか!これからあともう2つ行くんぞ!」
と言い残し、写真を撮影し用無しとなった私を置き去りにして、車で隣町まで出かけて行きました。そう、彼は毎年春、3つの山と畑を管理しているのです。ちなみに彼は今でも平日フルタイム勤務しています。職人おいさんに休み無し!
ほぼ毎日実家のレストランにコーヒーを飲みに来るSちゃんですが、私を置き去りにしたその日、レストランに現れたのは夕方近く。9時間位出かけっぱなしだったのです。そしてその手にはこれが↓
真空パックされた朝どれタケノコ! 彼はどこでタケノコを湯がき、真空パックにしてきたのか!? 1か所で20本近くタケノコを採り、その後2か所行ったはずなので、50本はタケノコを収穫していたはず。その大量のタケノコを湯がいて真空パックにする元タクシードライバーが日本全国どこにいるでしょう?まさに職人です。
私:「これどこでやってきたん!?」
Sちゃん:「そげなん知るか!」
知ってるはずなのに声を荒らげて「知るか!」と言い張るSちゃん。きっと「職人おいさんクラブ」でもあるのでしょう。
職人おいさん達がその日の収穫を持って集まり、大鍋でぐつぐつ煮ながらたわいない会話に盛り上がり、「あん山はもうタケノコかとう(硬く)なったわぁ」など各地の報告などしながらタケノコを真空パックに仕上げるおいさん達の秘密クラブ。
すぐにカメラを持って「撮影させてくれ」としつこく付きまとう私には絶対に明かせないクラブなのでしょう。いつかそのクラブに潜入取材したいと思います。
70代でも活き活きと四季の自然を楽しみ美味しい物をゲットする「職人おいさん」。多分、臼杵市は年をとればとるほど仲間も増え、楽しみが増えていく町なのだとおもいます。
今はコロナウィルスで移動制限などがありますが、又自由に安心して行き来ができるようになったら、是非都会から臼杵へ移住見学に来てみてください。あなたも定年退職後は「職人おいさん」になれるかもしれませんよ。
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