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「すずめの戸締り」聖地巡礼に見るロケ地・臼杵

今年の3月から5月にかけて、NHKBSで「グレースの履歴」というドラマがありました。

車で旅をしながら各地で出会う人々との物語では毎回感情が揺さぶられるものがあり、終了した今でもその余韻に浸っています。


未だドラマのことを考えているのは、物語の素晴らしさに加え、大学時代住んでいた愛媛県松山市がロケ地の一つだったこともあります。ドラマに影響され、今年は卒業以来行っていなかった松山に行ってみようという気にさせられました。只今計画中です。


ドラマや映画のロケ地に行ってみたいと思う観客・視聴者は世の中に少なくなく、「聖地(=ロケ地)巡礼」というものが流行っているのも事実です。


今年は長編アニメ「すずめの戸締り」の影響で訪れる人も増えている巡礼地・臼杵。今回は2本の映画を例にロケ地としての臼杵の魅力を書いてみたいと思います。

劇中のフェリー名とは若干違うものの、それらしい名前

新海誠監督作「すずめの戸締り」

大ヒットアニメ映画「君の名は。」の新海誠監督が2022年に制作した長編アニメ映画「すずめの戸締り」。各地で起こる災いの元となる「扉」を閉じるために、主人公・すずめが日本を縦断するというこちらもロードムービー要素を持つ映画で、新海監督の最高傑作と言われています。


国内外で人気のあったこの映画に、なんと臼杵が3スポット登場しているのです!

私は鑑賞前に、「すずめが四国へ渡る港がどうも佐賀関港と臼杵港の合作らしい」という話を聞いていたので、その部分はガッツリ観てどういう「合作」になっているのか気づきました。


まさにこちらのスポット、というか看板が登場しています↓

佐賀関(劇中は門波)港にあった臼杵港の看板

確かにレトロ。昔ながらのフェリー港の看板という感じです。

これは、都会から来た人が「ちょっといいな」と思えるものかもしれません。

私は関東や海外に27年住んでいましたが、臼杵にUターンして早5年目。どっぷり臼杵市に浸かり臼杵市民に戻りつつある今、「こういうレトロ感がいいんだよ」という感覚が抜け落ちてきています。


あと2か所がどこだったのかというと、実は鑑賞時全く気付いていませんでした。

映画を観終わってフェイスブックで「すずめの戸締り良かった」と書いたら友人が

「臼杵高校出てたやろ?」

と衝撃コメント!3年間通った学び舎を見事にスルー。

あとから映像で確認すると、本当にそのまんまの場所が描かれてました↓

30数年前に通っていた頃と比べ、耐震筋交いを除き何ら変化のない母校の校舎

臼杵高校のこの構図は、すずめの通う高校が登場するときと同じ。なぜスルーしたのか全くの謎です。


加えて、すずめの通学路にある踏切が、臼杵高校の横にある踏切だったのです。今回この場所が「祇園踏切」とキチンと名前のある踏切だったということを初めて知りました。50年目の気づき↓

劇中の背景は青空のみだったので全く気付けなかった祇園踏切

「すずめの戸締り」は日本神話に登場する神の名前や物語のモチーフを含むことから、

「制作陣は八坂神社の御旅処を見て臼杵高校やこの踏切を描いたのではないかなぁ」

なんてことを市民としては考えてしまいます。


7月に行われる約400年の歴史を待つ「臼杵祇園祭」。中心街にある八坂神社から行宮(あんぐう)である御旅処(臼杵高校から祇園踏切を渡った先の突き当り)へ神様が御輿で御渡される御神幸/御還幸です。私が臼杵に居た18歳の頃まではこの期間中臼杵高校から御旅処までの狭い道両側にびっしりと屋台が並び、神楽殿では柴引が行われる楽しいお祭りでした。現在では屋台の数がずいぶん減って寂しくなりました。

八坂神社の御旅処は臼杵高校から200メートルほど先にある

コロナ禍を経て今年は祇園祭が通常開催されるので、このお祭りに関しては当ブログで6月に書く予定です。


いずれにしても「すずめの戸締り」を観ると、地方がそのままの風景で描かれている場所は部分的で、背景が違ったり、ちょっと加えていたりと面白い表現をしています。

「ここ!」とはっきりわかる場所もあるのですが、むしろ「日本のどこかに必ずありそうな風景」として描かれている感じがします。そうすることで我々日本人のDNAに植え付けられたノスタルジックな景色を見ることができ、ここ400年町割りが変わっていない臼杵を聖地巡礼する人々には、尚更古き良き日本が見えてくるのではないかなぁと思うのです。たとえそれが若い世代であっても。


大林宣彦監督作「なごり雪」

ロケ地・臼杵を語る時、この映画を無くしては語ることができないかと思います。

2020年に亡くなった大林宣彦監督は臼杵の町並みを愛し、この美しい「古里」を後世に繋いでほしいというメッセージを映像で遺してくれました。


映画では、主人公たちが住んでいるという設定の町八町と二王座界隈が多く登場します。

通学風景で登場したのは甚吉坂のある二王座の三叉路↓

民家のある部分が学校という設定でした

ヒロインの家は二王座の高台↓

当ブログでもたびたび登場するスポット

三浦友和演じる主人公の実家は、私の店から徒歩30秒にある古民家↓

正面は「久家の大蔵」という観光スポット

どこも臼杵らしい風景を観ることのできる場所ばかりですが、「なぜここを撮った?」というスポットもあります。

頭を下げねば通れない線路をバックに登場人物2人が川沿いを歩くシーンです。

線路を背景にこの道を歩く1シーンあり

ここからは私の想像ですが、ロケの為に古い物を見て歩く中で、多々良川に架かる古い木造橋にも出会ったのではないでしょうか?そして並走するJRの線路の低さにも驚愕したはず。

1.5mの看板の右に古い木造橋がある

直接お会いしたこともある大林監督はユーモアと優しさがたっぷりな方でした。頭の上をゴンゴン走る電車の迫力をきっと面白いと感じたと思うのですが、流石にそんな画を撮ったらふざけ過ぎなので、せめてバックにその線路をおさめたのではないかなぁと思うのです。あくまで個人的な想像ですが。


2002年の映画なので、映像の中には現在では取り壊して無くなった建物などもあります。

大林監督のファンの方が未だに訪れてくれる臼杵。そんな方々に、あの時から変わった臼杵、変わらない臼杵、両方楽しんでいただければと思うのです。そしてちょっとご自身の故郷・古里を思い出していただき、大切にしていただければなぁと感じています。


ついでに、大林監督ファンの方には是非私のお店にも立ち寄っていただければと思います。

13:30-16:30という難儀な営業時間の当店

監督が臼杵市で拠点にしていた喫茶店「クランク・イン」の閉店後、3年ほど空き家になり、その後入居して雑貨屋と整体院をしています。


大林監督の美術担当をされていた方が内装を手掛けたそうで、そのまま使っています。築100年は経とうかという古民家の内装と、私の扱う海外のビンテージ食器や雑貨類が結構いい味出してますのでお気軽にどうぞ。


臼杵を見ることができる2本の映画、やはりそこには「古さと歴史の美学」があるように思います。そんな臼杵、日帰りではなかなか見尽くせないので、来られる際にはぜひ泊りで!

さらには移住して臼杵の住人になれば毎日が出会いの連続。歴史好き、古もの好きには堪らない町でしょう。皆さんのお越しをお待ちしています。


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